指導者のかたへ

「ブループラネット賞ものがたり」は、環境学習にも広くご利用いただきたいという思いから、ひとつの「ものがたり」に対して「学習の手引き」「参考情報」そしてこの「指導者のかたへ」という、三つの「環境学習補助コンテンツ」を用意しています。
このページでは、指導者のかたが教材として利用することを想定し、指導の助けになるような情報を掲載しています。
学校での環境学習の授業や、お子さまの自主学習などに、ぜひお役立てください。

<対象:学校の先生、保護者など、教育指導にあたるかた>

  • ものがたりの要旨
  • ものがたりに書かれている受賞者の功績について、要点をまとめています。
  • 指導方法の例
  • ディスカッションやグループワークの例題を、具体的な実施手順も含めて掲載しています。

指導に向けたものがたりの再確認

ウォーカー教授は生態学者としての研究の中で、生態系があるポイントを超えると突然別の状態になり、元に戻らなくなることに気づきました。そして、自然生態系や地球環境が突然変化し人間社会が持続性を失ってしまう前に、自然と社会が一体となってシステム全体のレジリエンス(抵抗性、回復性、強靭性)を高める必要性があることを提唱し、その発展に大きく貢献してきました。レジリエンスの概念は、今日では環境保全のみならず、環境経済、防災など、様々な分野で発展を続けています。
子どもたちに学習の機会を提供するにあたって、レジリエンスの概念を実態を伴った体験として提供するには、その材料となる事例を見つけ出すことが困難と考えられることから、まずは身近な自然環境の変化に気づく機会を提供し、自然環境の持つ機能について学んでみてはどうでしょうか。


指導方法の例

指導に用いる適切な教材が見当たらない場合は、以下を参考にしてください。

身近な自然の長期的変化を調べる

【ねらい】
自然環境のレジリエンスそのものを身近な事例として把握するのは困難なため、まずは身近な生態系などの自然を対象として、人間が関わることによる自然の変化とはどのようなものなのかを自分たちで把握します。子供が認識している自然の変化は10年程度ですので、より長期的な変化を把握するとともに、変化の原因、変化の結果がもたらした様々な影響、変化した結果を今後はどうすべきなのか、等について調べ考えます。

1. 身の回りの自然は、今と昔はどう違う?

数人ずつのチームごとに担当エリアを決め、身の回りの自然がどのように変わってきたのか調べます。 図書館やインターネットなどで調べるだけでなく、両親、祖父母など、その場所に昔から住んでいる人に聞いてみたり、実際に観察してみたりするとよいでしょう。

・今と昔で、大きく違っているのはどこか。

(例)
昔、このあたりの田んぼには春になると一面にレンゲが咲いていた。しかし今はほとんど咲いていない。

・変化のきっかけは何だったのか。

(例)
昔、レンゲがたくさん咲いていたのは、農家が種をまいていたからだった。レンゲなどマメ科の植物は、窒素を蓄えて土を肥やすので、農家では秋の稲刈りが終わった後の田んぼにレンゲの種をまき、翌年の春、レンゲの花が咲き終わると、田植えが始まる前に土にすき込んで肥料にしていた。
しかし、ある時期から化学肥料が使われるようになり、レンゲを肥料にする必要がなくなったので、農家が種をまかなくなった。そのため、今はレンゲが咲かなくなったのである。
※自然の変化だけでなく、その場所の人間社会の様変わりについても併せて把握します。

・変化した結果、どのような影響があったか。
  • (例)
  • 昔は一面のレンゲが春の風物詩でとても綺麗だったが、今は殺風景になった。
  • 昔はレンゲの花の蜜を求めてミツバチがたくさん飛んできたが、今は飛んでこなくなった。
  • 昔は近所の子どもたちが田んぼでレンゲの花を摘んだりして遊んだが、今はそういう遊びもなくなった。
  • 化学肥料を使い始めてからのほうがイネがたくさん収穫できるようになった。また、化学肥料は安くて手間もかからないので、農家はずいぶん助かっている。ただ、化学肥料だけを使っていると土から微生物が減って土地が痩せてしまうらしい。

調べた結果について発表し、意見交換します。

<指導のポイント>

人間が生活しているエリアでは、50年もすれば状況が大きく変化することはよくあることですが、変化した理由を明確にし、その変化が本当に必要なことだったのかを考えるきっかけとなるよう意見交換を誘導してください。
例えば、上記で例に出した「田んぼのレンゲが消えた」ことについては、

  • レンゲがなくなるなら化学肥料を使わないほうがよかったのか。
  • イネがたくさん収穫できることが一番大事なのだからよかったのではないか。

など、様々な視点から意見が出ることが考えられますが、この段階では「これが良い意見」といった結論を導き出すことは避け、それぞれの意見を尊重してください。

2. 今後は、どうしたらよいのか?

1. でまとめた情報と話し合った内容をベースに、これから「身の回りの自然をどうしたいか」について話し合いましょう。

意見の例
  • 昔のように春の田んぼにレンゲが咲くようになってほしい。綺麗だし、楽しいし、ミツバチも戻ってくる。
  • 農家にとってもいいことがないとだめだと思う。化学肥料とレンゲの肥料の両方をうまく使えれば、イネがたくさん収穫できて、土もよく肥えた、そしてレンゲも咲く田んぼになるのではないか。
  • レンゲが復活してミツバチが飛ぶようになったら、蜂蜜を作って売れるかもしれない。
  • レンゲやミツバチの他にも、田んぼの生き物の今と昔を調べて考えてみたい。
<指導のポイント>

上記1でのディスカッションと同様に「この意見が正解」と決めつけることがないようにしてください。ただ、子どもたちの意見が感情論に走るとディスカッションが成り立たなくなりますので「そう考える理由は何か」をしっかりと話すように誘導してください。
また、このディスカッションの中に、レジリエンス的な視点を少しだけでかまいませんので盛り込んでみてください。
(例)
私たちは田んぼのどのようなはたらきを大事にするべきなのだろうか。イネを収穫できる農地としてのはたらきか、それともレンゲが咲いてミツバチが飛ぶような自然本来としてのはたらきか、あるいは両方だろうか。

<発展的課題>

自然の変化を考えるうえでもう一歩先に進めそうであれば、身近な自然を対象に「レジリエンスを失ったかもしれない事例」について探してみましょう。 厳密に判別するのは非常に困難ですので、「レジリエンスを失い元に戻らなくなっているかもしれない」と感じる事例であればかまいません。ゆっくりした回復可能な変化とレジリエンスを失った回復不可能な変化の違いについて自分なりに考えることで、例え事例が見つからなくても、レジリエンスとは何かを理解するのに役立つでしょう。
(例)

  • 湖が汚れ過ぎて以前とは全く異なった生態系になっているかもしれない。
  • 小さな沼が汚れを吸収しきれずにレジリエンスを失い元に戻らなくなっているかもしれない。