4. 未来への希望

望ましい未来とは

世界は今、非常に厳しいじょうきょうにおかれているとウォーカー教授は思っています。気候変動のえいきょうにより、世界のさまざまな場所で、生態系にも人間社会にもこれまでに経験したことのないような変化が起きています。しかも、変化の速度があまりにも早すぎるのです。
これまでどんな生態系も、また人間社会も、さまざまな予想外の変化にさらされてきましたが、その都度、その変化に対応して進化してきました。しかし、あまりにも変化が急だと、対応が追い付きません。今や、地球という大きなシステム全体が危険にさらされているのです。

ウォーカー教授は、予測不可能な変化に対応し、人間社会を持続させるゆいいつの方法として、どんな変化にも対応でき、できるだけ回復力が高いシステムを作り上げることが現在の私たちのテーマだと言っています。つまり、高いレジリエンスを持つ社会です。
このようなじょうきょうにも関わらず、今日の世界では、人々が社会の中で変化を好まず、できるだけけようとするけいこうにあります。例えば、気候変動を否定する人たちは、目先の対処コストが高すぎるという理由で気候変動を否定し、これまでと同じやり方を続けようとしています。そうしたかれらの姿勢を、ウォーカー教授は非常に問題だと思っています。
変化はときとして痛みをともないます。しかし、困難に対して進んで立ち向かい、対応策を考えるには、場合によってはそのような変化を受け入れることも必要だと教授は考えています。
私たち人間が生き延びるには、変化に適応しつつ、社会・生態システムのレジリエンスを高める必要があります。それが達成できているのが、望ましい未来だと言えるでしょう。

希望もあります。現在はとても早いスピードでテクノロジーが進化しています。さまざまなテクノロジーが、新しいかんきょうや気候変動、資源量の変化などに適応するための手助けをしてくれるのではないかと教授は期待しています。
私たち人間が生態系の一部であることをしっかりと自覚しつつ、健康で幸せに生きられる社会こそが、私たちにとって最良の世界だと教授は考えています。

受けがれるレジリエンス研究

現在、ウォーカー教授は海外の大学で講義をしたり、CSIROの研究プログラムに関わりながら若い科学者の相談役をしたりしています。最近は、おくさんといっしょに自然の中を散歩したり、カヤックをしたり泳いだり、孫と過ごしたりするのが教授の楽しみです。

レジリエンス・アライアンスでの研究が始まっておよそ20年。今では、レジリエンスというがいねんは、持続可能性に関わるプログラムや気候変動への国際的な対策の方針などに多くのえいきょうあたえるようになりました。レジリエンスが重要であるという理解が広まり、その意義が受け入れられるようになったのです。

ウォーカー教授の大きな希望となっているのが若い世代の人たちです。現代の若い世代の人たちは、変化に対して否定的な年配の政治家などよりよほど高い意識を持っていると教授は思っています。
レジリエンス・アライアンスも、ウォーカー教授をはじめ設立メンバーはもう現役をばなれていますが、現在は若い人たちが新しく参加しています。こんなこともありました。2017年、ウォーカー教授がレジリエンス・アライアンスの会合に参加したとき、多くの若い参加者が「あなたの意見に同意できません。あなたが書いたことは間ちがっています」と言ってきたのです。教授は「何だって?」と言いながらも内心では「いいぞ!」と、思っていました。

CSIROやレジリエンス・アライアンスの若い研究者たちは、世界で何が起こっているのかを、そして大きな変化が私たちの意識や、社会に必要なことをきちんと理解したうえで、地球の未来にこうけんするため、レジリエンス研究を新たな高みにし上げようと日々努力しています。ウォーカー教授にとって何より心強いことです。

ウォーカー教授