1. よい社会をつくりたい

よい社会をつくるにはどうしたらいいのだろう?

ジェフリー・D・サックス教授の研究は、子どものころの経験と、世界中を自分の目で見て歩いたことと、とても関係しています。サックス教授が世界の動向から何を感じたのか、まずはそこからお話しします。

ジェフリー・D・サックス教授の幼少時代

サックス教授は1954年、アメリカのデトロイトで生まれました。当時、デトロイトは自動車産業の中心地。とても活気のある街で、ジェフ(ジェフリーのあいしょう)はこの街が大好きでした。
このころ、「公民権運動」が始まっていました。アメリカで長いこと差別を受けてきたアフリカ系アメリカ人(黒人)が、白人と同じ権利を求めて起こした運動です。ジェフのお父さんは弁護士で、この公民権運動にも深く関わっていました。ジェフの家では、社会が公平であるために正しいことをすべきだという「社会的正義」が当たり前の考え方だったので、子どものときからその大切さを教えられて育ちました。

1967年、ジェフが13才のとき、デトロイトで人種暴動が起きました。黒人と白人が激しくしょうとつしてたくさんの人が亡くなり、それ以来デトロイトの街は変わってしまったのです。「公民権運動」末期の、ジェフに大きなショックをあたえたできごとでした。

社会主義国への旅行

高校2年生の時にソビエトれんぽうに旅行したことが、ジェフが今の道を志すきっかけのひとつになりました。そこは、ジェフが生まれ育った資本主義のアメリカとは全くちがう、社会主義の世界でした。

当時は1970年代、冷戦の最中、資本主義と社会主義が対立していた時代です。15才のジェフは、思いました。「何がよい社会をつくるのだろう?」「場所によってなぜ、やり方がちがうのだろう?」
ジェフは、この疑問を、このさき何十年も問い続けることになります。

経済学の道へ

1972年、ジェフはアメリカの名門、ハーバード大学に進学しました。経済学を選んだのは、世界をよりよく理解できるようになり、そして世界の問題を解決できるのではないかと考えたからです。

経済学の道へ

1978年、ジェフは大学院での勉強のため、インドへ1ヶ月間の旅行に出かけました。そこでジェフは、初めて「極度の貧困」を目にすることになります。それは想像していたよりずっと深刻なものでした。
広い土地と古い文明を持つこのりょくてきな国が、なぜこんなに貧しくなってしまったのだろう?この国が貧しさからぬけだすために何ができるだろう?ジェフは、自分がいつかこういう問題を理解して、解決に役立てるようになったらどんなにうれしいだろうかと考えました。
そしてまた、実際に現地を訪れ、自分の目で見ることが何より大事だと、実感するようになったのです。

2. 国をしんだんする

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ジェフリー・D・サックス教授

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