2. 人間と自然の関わり

自然を守ること

自然資源の例

森や川、山や海、それに大気…自然は、なくてはならないものです。

自然資源の例

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森や川は、考えて使えば、いつまでも使い続けられます。水は降った雨がいずれは海に流れ、それが水蒸気となってまた雨になります。この流れをとだえさせなければ使い続けられます。木を切っても、また生えてきます。これを自然の再生能力といいますが、これには限りがあります。使いすぎると、その再生能力が追いつかず、自然がなくなってしまうのです。

人間は、20世紀に入ってからの100年間で、かつてないほど自然の資源を使い、また汚してしまいました。このままでは、近い将来、自然は再生能力を失うほど減少してしまうでしょう。
ダスグプタ教授は1970年代から自然の研究をするようになり、将来のために、人々がどう行動しなければならないかを、きちんと伝えていこうと考えたのです。

自然は、ただ美しいから、なくなったらそこに住む動物たちがかわいそうだから、守らなければいけないというだけではありません。
人間は、自然がなければ生きていけないのです。水や空気がなくて生きていけるかどうか、みなさんもきっと、かんたんに想像できることだと思います。

経済学は、人間がもっと豊かに、幸せになるにはどうすればいいのか、考える学問です。
それなのに、経済学の世界では長いこと、自然の資源が軽くあつかわれていました。ある植物園の園長さんが、ダスグプタ教授に手紙を送ってきたことがあります。
「なぜ国の経済を考えるとき、自然かんきょうのことがめったに出てこないのでしょう。経済学者たちが、自然の資源を研究するための言葉を持っていないからですか?」

ダスグプタ教授はこのじょうきょうを変えたいと強く思っています。
そのために、ダスグプタ教授は、自然と人間がどう関わっているかを研究することで、人間の幸せや豊かさに、自然がどんなに役立ってきたかを明らかにしようとしてきました。自然が、経済学の中心であつかわれるようになること―これは、現在にいたるまで取り組みつづけている、ダスグプタ教授の大切なライフワークです。

かんきょうを守ることと、貧しい国が豊かになることは、
同じではないのか?

直接自然を利用している人たち

自然と人間がどう関わっているかを調査するために、ダスグプタ教授が主に研究したのは、豊かな国よりも貧しい国、それも、小さな農村で人々がどのように生活しているか、といったことでした。近くの川で水をくんだり魚をとってきたり、村のみんなで共有している土地からたきぎをとってきたりと、直接、自然を利用している人たちです。

研究をしていると、「自然」と「貧困」には関係があることがわかってきました。
貧しい人たちは生活を自然の資源に頼っています。自然かんきょうの悪化はもっとも貧しい人たちの生活をさらに貧しくするのです。たとえばばくが広がって近くの水場がかれたり、木を切りすぎたりすると、貧しい人たちは、水くみやたきぎとりに遠くまで行かなければならなくなり、ますます生活が苦しくなります。

「自然かんきょうを守るより、貧しい人たちは豊かになることを優先したほうがよい。豊かになってはじめて、自然環境を気にかけるゆうがでてくる。」という意見もあります。豊かになるにはお金をかせがなければならず、そのためには、たとえば輸出する木材をとるために森の木を切りすぎてしまったり、ものをつくる工場からのはいえんはいすいで空気や川が汚れたりするのもしかたがないというのですが、そうではない、むしろ「環境保全」は「貧困問題の解決」につながることでもある、というのがダスグプタ教授の考えです。

ダスグプタ教授が不思議だと思ってきたことがあります。それまでの経済学では、貧困や開発を問題とするとき、自然かんきょうのことを忘れていました。逆に、自然環境の問題を考えるときには、貧困のことは忘れていました。
ダスグプタ教授は、自然環境と人間の生活はえいきょうをあたえあっているのだから、両方をいっしょに考えなければだめだと思ってきました。だからダスグプタ教授は「環境の経済学」と「貧困の経済学」を同じ学問として、まとめあげたのです。これは、それまでになかったことでした。 

3. 持続可能な発展へのみちすじ