指導者のかたへ

「ブループラネット賞ものがたり」は、環境学習にも広くご利用いただきたいという思いから、ひとつの「ものがたり」に対して「学習の手引き」「参考情報」そしてこの「指導者のかたへ」という、三つの「環境学習補助コンテンツ」を用意しています。
このページでは、指導者のかたが教材として利用することを想定し、指導の助けになるような情報を掲載しています。
学校での環境学習の授業や、お子さまの自主学習などに、ぜひお役立てください。

<対象:学校の先生、保護者など、教育指導にあたるかた>

  • ものがたりの要旨
  • ものがたりに書かれている受賞者の功績について、要点をまとめています。
  • 指導方法の例
  • ディスカッションやグループワークの例題を、具体的な実施手順も含めて掲載しています。

ものがたりの要旨

デイリー教授は少女時代、酸性雨問題に出会ったことをきっかけに、科学者として知識を身に着け、社会に貢献しようと思い立ちます。
長じて生物学者になったデイリー教授は、当初は手つかずの自然の保全に注力していました。しかし、コスタリカの農場に豊かな生態系を見出したのをきっかけに、人間の生活圏にある自然の重要性に気づき、そのような人間の身近にある自然「カントリーサイド」の謎を解き明かす「カントリーサイド生物地理学」を確立したのです。
また、自然保護のためには、自然の経済的価値を知らしめることが大事だと思い立ち、その考え方を世に広めるようになります。さらには、そのような考え方を実践に移すべく「自然保護プロジェクト」を立ち上げ、自然の価値評価が国策などに取り入れられるよう、世界各地で支援を続けています。
目指すべきは、自然の中で子どもたちが遊ぶことのできる世界。その目的のため、精力的に活動の枠を広げ続けるデイリー教授のエネルギーにもぜひ着目してください。


指導方法の例

指導に迷われた場合は、以下を参考にしてみてください。

身近な自然のことを知ろう

【ねらい】

デイリー教授が着目してきたのが、人間の身近にある自然「カントリーサイド」です。ここでは実際に自分たちの身近にある「カントリーサイド」を通して、その生態系の豊かさ、そしてその恩恵について体験的に学びます。
デイリー教授のスタイルを、少しだけまねてみることにしましょう。まずは、「カントリーサイド」にも想像以上に豊かな生態系が息づいていることをフィールドワークによって調べます。次に、デイリー教授たちの開発したコンピューターソフト「InVEST」にならい、生態系サービスの地図を作ってみることで、身近な自然から自分たちがどのような恩恵を受けているのかを考えます。

1. 身近な生態系を調べてみよう

林、川、畑、公園など、家や学校の近くにある「自然」を一つ選びます。そして、その自然を観察し、その土地にはどんな特徴があるか、そこはどんな植物や動物がいるか、お互いにどのような関係にあるか、などを調べて書き出してみましょう。
例えば、都市部に住んでいる場合は近所の公園、自然環境が豊かな地域に住んでいる場合は近所の畑などを選ぶ方が、作業がしやすくなるでしょう。ポイントは、人の生活と自然環境の関係やせめぎ合いが把握しやすいところを選ぶことです。

(例)近所の公園

雑木林が豊富。

  • クヌギやコナラなど、どんぐりのなる木が生えている。
  • クヌギなどの木の樹液を吸いに、カブトムシやクワガタ、カナブンなどの昆虫が集まってくる。
  • ムクドリなどの鳥が雑木林をねぐらにしている。
  • たまにアオダイショウのようなヘビにも遭遇する。

公園の中ほどに、小さな池がある

  • コイ、ナマズ、モツゴなどの魚、ヤゴやアメンボなどの水生昆虫がいる。
  • 岸辺でクサガメが日光浴をしていることもある。
  • 春先にはアマガエルが卵を産む。
  • カルガモやアオサギなどの水鳥が水草や魚、虫を食べている。春〜夏にはカルガモがひなを連れている。
2. 身近な生態系の地図を作ってみよう
①1で調べた身近な自然の場所と、自分の家あるいは学校の場所などを地図に書き入れてみましょう。
②次に、その自然がなぜ大切なのか、人間にどのような恩恵をもたらしてくれているかを考えて書き出してみてください。

自然の恩恵にどのようなものがあるかは、「ミレニアム生態系評価」や「生物多様性と生態系サービス(TEEB)」で出している生態系サービスの分類例などが参考になります。例えば「雑木林の中を散歩していると気持ちがいいから」も、「文化的サービス」といって立派な生態系サービスの一つです。樹々とのふれあいが心身によい影響をもたらすことは森林浴として広く知られていますね。

<参考>
生物多様性と生態系サービス - 環境省【日本語】
Ecosystem Services - TEEB【英語】

(例)近所の公園の恩恵
  • 遊歩道を散歩していると気持ちがいい。よい気分転換になる。
  • 雑木林や池はたくさんの生き物のすみかになっている。
  • 夏でも他の場所より涼しい。こころなしか、公園の近くの自分の家まで涼しくしてくれているようだ。
  • このあたりの水は美味しい。飲料水に地下水を使っていると聞く。公園の雑木林はその雨水などを溜めてきれいにする役割も果たしているそうだ。
③その地域にどのような「自然の恩恵」があるか、絵や文を使って地図に書き込み、まとめます。この地図を使って自分に身近な「自然の恩恵」について発表しましょう。

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<発展的課題>

ここまで「人間にとって役に立つ自然の価値」について考えてきましたが、さらに「人間にとっては直接には役に立たないけれども、自然の大事な価値」についても考えてみると、より多様な考え方を育むことができるでしょう。

<指導のポイント>

たとえ小さな庭であっても、それは自然とみなしていいことにしてください。私たちの身近にある自然こそが、デイリー教授が着目した自然です。