4. 人の想像力

シナリオプロジェクト

カーペンターさんは湖の研究をするかたわら、より良い環境保全計画をつくるための方法についても研究してきました。それがシナリオプロジェクトです。

一般的に、環境保全計画は、明確な目標を設定し、専門的な知識やコンピューターモデルを活用して作成されています。しかし一方で、このような手法で作られた計画は、その地域の事情、住民の心情へのはいりょ、未来へのどうさつなどが不足していることが多くあります。これに対して、カーペンターさんたちが進めているシナリオプロジェクトでは、起こりうる複雑で不確実な未来について創造的に考えるために、人間の想像力を用います。

シナリオプロジェクトは、まず人の話を聞くことから始まります。ねんれいも職業も立場も異なる様々な人たちに集まってもらい、環境について、将来どうなってほしいか、どうなるのが心配なのかといった話を聞きます。科学者、社会学者、アーティスト、そして地域に暮らす一般の人たちが一堂に集まり、地域の未来について語り合うのです。すると、同じことについて考えていても、立場が異なれば見方も違って、それぞれ多様な見方を持っているということがわかります。その結果をもとに将来についてのものがたりをみんなで一緒につくります。そこにコンピューターモデルでのぶんせきや科学的な知見を盛り込んだ後、アーティストなどの助けを得ながらものがたりは人々の感情にうったえかけるものへとみがき上げられていきます。カーペンターさんはこのものがたりを一緒に作る作業がとても大切だと言います。なぜならものがたりによって感情を動かされた人々は、行動を起こすようになるからです。

実際にカーペンターさんたちは、出来上がったものがたりを文章や映像作品、子供たちの演劇にして人々に見てもらいました。環境問題をどんな人にも理解しやすい形にすることは、人々が未来についてみんなで決めていくための良い方法となっています。

伝える力

カーペンターさんは、みなさんのような子どもたちを未来への希望だと考えています。地球の環境をよりよくしていくためには、科学や数学、コンピューターの知識などいろいろなことを身に付けていくことが必要です。一方、それと同じように重要なのが、人の心を動かすストーリーを語る力です。カーペンターさんがシナリオプロジェクトでじっせんしたように、人の心を動かすことが次の行動につながっていきます。

みなさんも自分の得意なことを活かして、世界をより良い方向に進めるために積極的に自分の考えを伝え、行動していきましょう。

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スティーブン・カーペンター教授

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