4. 世界に広がるGNHのがいねん

持続可能な開発とGNH

近年、世界では経済成長、環境保護、人々の心身の健康などにおいて様々な問題が起きており、資本主義や消費社会の限界がけんざい化しています。世界をリードするはずだった先進国も、環境を保全し、持続可能で公正な開発を行い、総合的な幸福に役立つ文化を振興し、社会的価値を高めようとするGNHの概念の価値に気づき始めています。

例えば、幸福度を社会的指標として利用する方法は、今日、国連やOECD(経済協力開発機構)などの国際機関でも採用されています。

また、2015年にさいたくされた持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は、よりよい世界を目指すために世界中のすべての国、ぎょう、地方自治体、個人が取り組む目標であり、経済・社会・環境という3つの側面のバランスを取りながら目標を達成することを目指しています。GNHはまさにこのSDGsの構想の初期の原型といえるでしょう。国連でSDGsに関する議論を始めたばかりのころに、ブータンではすでにGNHの概念が確立されていたのです。
このように、GNHの概念は、経済や効率が優先されがちな現代社会に生きる私たちに新たな視点をもたらしてくれているのです。

ブータンの今とこれから

気候変動の脅威が現実のものになりつつある今日、ブータンの経済や環境に、まだ多くの課題があることも事実です。グローバリゼーションとIT技術の進歩により、ブータンの人々にも消費文化が急速に広がり、伝統的な価値観に影響を与えている可能性があります。しかし、そのような状況でもGNHの考え方を元に人々の幸福を追求し続けているブータンの将来はぜんとして注目されています。

提供:ブータン政府観光局

提供:ブータン政府観光局

GNHの価値観がよく現れているユニークな例が、「高価値、少人数」の観光政策です。これは、観光客に観光税を課すことで、文化的景観や自然環境への悪影響を抑えつつ、外貨収入を得ようとするものです。

GNHを提唱し、国民の幸福を何よりも重視してきたジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王陛下は、2006年、51歳の若さで現在のジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク第5代国王陛下に王位をゆずられました。第5代国王のもとでも、人間の幸福度を社会指標のひとつとするGNHの考え方は受けがれています。第4代国王陛下は今も多くの国民から「だいな第4世」と呼ばれ、尊敬を集めています。

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ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代ブータン王国国王陛下

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